2016年6月1日水曜日

人事評価ツールとしての目標管理

ドラッカーの理論をベースとした目標管理を人事評価制度に組み入れている会社は数多くあります。ドラッカーは著書『経営者の条件』の中で生産性を向上させるには、「目標と自己管理によるマネジメント」が欠かせない、としています。これは、組織やチームの目的や目標に応じて、メンバー自らが自分の目標を掲げ、達成に向けて自律的に自身を管理する活動を意味します。

また、目標管理は業績管理ツールとして、PDCAサイクルを、個人ベースで実行することになります。まず、具体的な成果を伴う目標を定め、達成のための計画を策定します。【Plan】 次に目標達成のための行動に移ります。【Do】 その後一定期間してから、所期の目標と実際の結果を比較します。【Check】 そして、そのギャップを把握し、改善点などを明らかにし、対策を検討して、次期の目標達成にフィードバックする。【Act】 というわけです。

さて、目標管理が評価ツールとしても、機能するために重視すべきなのは、まずは目標の設定【Plan】だと考えます。業績管理ツールとしては、目標設定時に組織やチームの目的や目標と個人目標が整合(分解と連鎖)していなければならないわけで、整合性が保たれていると、個人が目標を達成することで、それがそのまま組織やチームの成果になります。

人事評価ツールとして機能するためには、組織目標との整合性に限定して目標設定するのではなく、個人の評価基準(職能等級基準・コンピテンシーなど)に基づいた、目標設定がなされることが必要です。この視点のない目標が設定されると、業績管理ツールとしてだけの目標になってしまうことになります。個人の能力・資格のレベルを大幅に超えた個人目標となったり、逆に軽くこなせる個人目標であってはいけないのです。あくまでも、個人の評価基準をベースとした、個人に相応しい目標でなければならないのです。

次に人事評価ツールとして、重視すべきなのは改善【Act】です。目標と結果の比較によるギヤップの把握【Check】によって人事評価を決定するわけですが、評価の決定と同様に重要なことは、このギヤップを解消するための改善内容、つまり個人の視点で考えると「能力強化すべきこと」、会社の視点で考えると「能力開発すべきこと」の明確化が、目標管理における人事評価ツールとしの重要な役割になります。

現在多くの会社が目標管理を採用していますが、運用が上からの押しつけになっているケースも見られるようです。目標管理をこのようないびつな業績管理ツールとして運用をすれば、人事評価は目標の達成のためだけの従属変数になってしまいます。目標管理は業績管理と人事評価の両方を満足させるツールとしての活用が肝要だと考えます。

                                                          加藤浩彦



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